研究概要 |
本研究は、複数の体肢が同時に運動した場合の各体肢への血流再分配を明らかにすることであった。前年度までの研究に於いて、低強度の足底屈運動に高強度の掌握運動を付加すると、下腿血流量の増加抑制の起こるのに対し、両体肢の強度が同等であれば、血流量の増加抑制は起こらないことが明らかにされている。そこで、本研究では、足底屈運動に上腕運動を付加して、同時運動時にみられる血流量増加抑制が、前腕より活動筋量の多い上腕運動の付加によっても起こるかどうかを明らかにすることを目的としている。被検者は20ー22歳の健康な女性6名とし、仰臥位で10%MVC相当の負荷を持ち上げる動的運動を10分間実施させた。足底屈運動(P)実施に加えて、2ー4分迄の2分間は10%MVC相当の上腕運動、6ー8分の2分間は50%MVC相当の上腕運動を付加した。上腕運動は肘関節90℃の位置から10℃伸展する肘伸展運動(EE)と10℃屈曲する肘屈曲運動(EF)の2種類とし、それぞれ別の日に実施した。運動中、心拍数(HR)、酸素摂取量(Vo2)、血圧(BP)を連続的に測定し、血流量(Venous occlusion method)は毎分5秒間、運動を停止して測定した。その結果、HR,Vo2,BPともに10%MVCの上腕運動付加時には大きな変化は見られなかったが、50%MVC運動付加所には有意な増加を示した。P運動実施中の活動肢の下腿血流量は安静時に対して平均4ー7ml/100ml/minの有意な増加を示した。上腕運動付加時にはEE、EF運動ともに付加前に比べて減少する傾向を示したが、その差は有意ではなかった。しかし、血管コンダクタンス(血流量/平均血圧)を求めると、50%MVC強度のEF運動付加時には付加2分後に有意な減少を示した。50%MVC強度のEF運動付加時には非活動肢である対側肢のコンダクタンスも有意に低下した。したがって、活動肢の血流量増加抑制が起こるかどうかは、相対的な運動強度や筋量だけでなく、加算される体肢の部位によっても異なると考えられる。
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