研究概要 |
本実験は健康な(特に高血圧者を除く)男女95名を被検者として用いた。年代別にみると20歳代24名(男子:13名,女子:11名)、30歳代24名(男子:13名,女子:11名)、40歳代24名(男子:9名,女子:15名)、50歳以上23名(男子:11名,女子:12名)であった。運動はMonark社製自転車エルゴメ-タを用いた負荷漸増最大運動とした。被検者に運動および測定に慣れさせるため、あらかじめ3段階の負荷漸増最大下テスト(1段階4分)を行い、その翌日から一週間以内に最大テストを行った。最大テストでは前もって行った最大下テスト同様に3段階の負荷を遂行した後、1分毎に漸増的に疲労困憊に至るまで負荷を与えた。テスト中、酸素摂取量、心拍数、血圧(特に収縮期血圧)を連続的に測定した。疲労困憊の判定基準は、I)酸素摂取量のレベリングオフがみられること、II)呼吸交換比が1.0以上の達することを条件とし、I・IIのうち少なくとも一方を満たすものと定めた。疲労困憊付近で得られた各測定項目の最大値をそれぞれ最大酸素摂取量(V^^・o_2max)、最高心拍数(HRmax)、最大収縮期血圧(SBPmax)として統計的分析に用いた。 V^^・o_2maxの年代別平均値は、20歳代で2.77±0.78(l/分)、30歳代で2.53±0.70、40歳代で2.07±0.60、50歳代で1.97±0.57であった。40歳代および50歳以上の各年代が20および30歳代に対してそれぞれ有意に低い値(P<0.01〜0.001)を示したが20と30歳代および40と50歳代のそれぞれの比較においては有意な差はみられなかった。HRmaxの平均値は、20歳代で192±8(拍/分)、30歳代で183±9、40歳代で174±7、50歳代で164±11であり、各年代相互に有意な差(P<0.001)がみられ、高い年代ほど少なくなる傾向がみられた。SBPmaxは、20歳代で202±25(mmHg)、30歳代で205±29、40歳代で211±22、50歳代で216±25であり、どの年代間においても有意な差がみられなかった。 以上の結果から、健康な中高年者の運動処方においては、トレ-ニング強度の指標となるV^^・o_2maxおよびHRmaxの基準値を、それぞれ青年者のおよそ19〜29%および5〜15%低い値とし、運動の安全基準となるSBPmaxの基準値を青年者と同程度とするのが適当であると思われる。
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