研究概要 |
運動強度とEIBの程度について検討を行った。対象は、国立療養所南福岡病院に入院中の気管支喘息児24名とした。最初に、被検者は、血中乳酸閾値(LT)を知るために、自転車エルゴメ-タ-による漸増負荷試験を行った。各負荷段階において耳朶より採血を行い、各負荷強度と血中乳酸値の関係から各人の乳酸閾値を決定した。そして、これを基準として5種類の運動強度(75,100,125,150,175%LT)を設定し、投薬を中止した条件で、それぞれの運動強度について6分間の自転車エルゴメ-タ-運動を日を変えてランダムに行った。換気機能については、オ-トスパイロメ-タ-を用い、運動前、運動直後、5分後、15分後に測定し、運動前値に対する運動後の最大低下率を算出した。血中乳酸値は、運動前、運動直後、3分後、5分後に測定し、心拍数は、運動前から連続的に記録した。その結果、血中乳酸値及び心拍数は、運動強度の上昇に伴い増加した。1秒量の最大低下率は、運動強度に依存して増加した。1秒量の最大低下率が、10%以上であったEIB陽性者の出現率は、100%LTから125%LT強度にかけて急増した。125%LT強度以下の運動では、半数以上がEIB陽性となったが、治療を要するほどではなかった。150%LT及び175%LT強度では、大部分の喘息児が、強度のEIB起こし、気管支拡張剤などの吸入が必要であった。1秒量の最大低下率が10%以上を示す最小の運動強度を定義したEIB閾値は、個人差が非常に大きいが125%LT強度での発現率が最も高かった。以上のことから、EIBの程度は、運動強度依存であることが明かとなった。さらに、125%LT強度は、強度のEIBを起こすことなく安全に行える運動強度として上限であると考えられた。
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