研究概要 |
昨年度で既存のT4ファ-ジ尾鞘蛋白質変異株の変異部位と置換アミノ酸の同定を終了し、引き続きアンバ-変異株を用いてアミノ酸置換を行った。昨年度部位の決定された10株のアンバ-株を天然及び人工のサプレッサ-大腸菌に感染させることによって、各アンバ-部位に11種のアミノ酸(Ser,Gln,Tyr,Leu,Ala,Cys,Glu,His,Phe,Pro,Arg)を挿入してそれぞれの場合の機能の回復を調べた。その結果、変異部位によって、挿入するアミノ酸の種類に関わらず機能を回復する部位(Q42am,Q72am,Q485am,Q497am;数字はN末端からから数えた残基番号を与す)、温度感受性もtsの表現型を示す部位(W34am,Q39am,Q277am)、低温感受性csを示す部位(W487am)、tsとcsの両方の表現型を示す部位(Q589am,Q592am)などがあることが分かった。これらの表現型は一次構造上の各アミノ酸の機能を反応していると考えられ、本蛋白質の構造機能相関を理解する上で貴重なデ-タであると考えられる。特に、cs型を示す部位がミスセンス変異で得られているcs部位の近傍に見いだされるのは興味深い。次に、点突然変異株と欠失変異体の作成を開始した。M13に既にクロ-ニングした遺伝子18を用い、Lehtovaaraらの方法(Prot.Eng2,63ー68(1988))により、primer extensionの際に誤った塩基を取り込ませることにより変異を誘起した。現在、2つの問題をかかえている。一つは変異導入の効率が報告されているより低いこと、第二にts、cs生じた変異遺伝子のスクリ-ニングの効率が悪い点である。第一の点については化学変異導入に切り替えることを考えている。第二の点は、スクリ-ニングの際に相補性検定を行うが、その際にT4ファ-ジアンバ-株を用いると組換え体との区別が難しいので、遺伝子18を完全に欠失したファ-ジを作って用いることにし、最近作成ができてこの点も克服できたので変異体の単離は時間の問題である。
|