今年度の実験では以下に記した2つの点を明きらかにした 1.ハ-ダ-腺由来細胞成長因子はその性質上非常にカラムに吸着しやすく、最終段階での精製が非常に因難であった。今回は数種の逆相カラムを試した後、アクアポア- Buー300カラムが使用できることを見出した。このカラムを用いて脱塩、精製を行い結果均一標品を得た。この分画を用いてアミノ酸配列の解析を行い、Nー末端から約40個のアミノ配列を決定した、この配列は既知のどの細胞成長因子のアミノ酸配列とも一致しなかった。現在この配列を基にクロ-ニングを行っている。 2.ハ-ダ-腺由来細胞長成因子生理的役割を調べるため、本因子及び、他の細胞成長因子のモルモット角膜細胞の増殖に及ぼす影響について検討した。本因子では5%FCSのコントロ-ルに対して150%まで〔 ^3H〕ーチミジンの取込みが増加した。さらに本因子と織維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子との組合せによりそれぞれの因子の単独使用よりも大きな増殖促進効果がみられた。上皮細胞成長因子、トランスホ-ミング成長因子との組合せではこのような効果は認められなかった。 また成長因子の受容体と反応することにより成長因子の効果を阻害するといわれるシュ-ラミンを用いた実験で本因子の細胞増殖促進活性を阻害されるが、織維芽細胞成長因子とはその阻害パタ-ンが異ることを見出した、このことは本因子が角膜実質細胞にその特異的受容体をもつことを意味する、この結果は本因子が角膜の創傷治癒あるいは細胞の恒常的維持に役立っていると考えられる(2.の部分については現在投稿中である。)
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