αーラクトアルブミン(αーLA)は乳糖合成酵素の修飾サブユニットであるが、直接酵素活性は示さない。このαーLAを加水分解酵素であるC型リゾチ-ムとの構造相同性に基づき遺伝子工学的に改変して酵素機能の実現を目指している。平成2年度に得られた研究実績の概要は次の通りである。 1.αーLAの機能改変;リゾチ-ムの活性部位とほぼ相同な部位がαーLAにも存在しているが、リゾチ-ムのAla107はαーLAではTyrに置換されており糖残基との結合を阻害していると予想されている。またリゾチ-ムで基質の糖残基の結合に重要な役割をはたしているTrp62はαーLAではIleである。そこで、αーLAのTyr107をAlaにIle62をTrpに部位指定突然変異法で変換した。改変タンパク質は大腸菌で発現させ、精製及び巻戻し操作の後、リゾチ-ムの基質類似体を固定化した親和性クロマトグラフィ-を用いて分析した。その結果この改変αーLAは糖残基と特異的に相互作用をすることが示唆され、酵素機能実現の第一歩となる可能性がある。 2.αーLAの酵母での分泌発現系;組換体αーLAを作製するためには大腸菌での大量発現系を利用しているが、この系では作製したタンパク質は不溶性顆粒となるため、可溶化、精製後、巻戻し操作が必要であり大変煩雑である。そこでより効率的な発現系として酵母での分泌発現系を確立した。この系ではヤギαーLAのシグナルペプチドは正しくプロセシングされ成熟型タンパク質として培地中に分泌される。培地中から精製した組換体αーLAのアミノ酸配列及び乳糖合成促進活性は天然型タンパク質と完全に一致していた。
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