1.フィブロネクチン分子上のRGD非依存性細胞接着シグナルCS1を移植したプロテインAの誘導体を作成し、その接着活性と細胞特異性を既に作成したRGDシグルナル移植プロテインAと比較・検討した。誘導体の作成は、プロテインA発現ベクタ-pRIT2Tを用い、カセット変異導入法により行った。得られたCS1シグナル移植プロテインAは、ヒトリンパ腫細胞(RA1細胞)に対して接着活性を示したが、ハムスタ-線維芽細胞(BHK細胞)に対しては接着活性を示さなかった。一方、RGD移植プロテインAは、RA1細胞に対しては活性を持たず、BHK細胞に対してのみ接着活性を示した。マウスメラノ-マ細胞とヒト横紋筋肉腫細胞は、CS1シグナル移植蛋白、RGD移植蛋白の両方に接着性を示した。これらの結果は、CS1シグナルがその接着活性と細胞特異性を保持したまま他のタンパク質に移植できることを示している。また、RGDとCS1の両方のシグナルを移植したプロテインAは、RGDあるいはCS1のどちらか一方を移植したプロテインAよりも強い接着活性を示した。 2.RGD移植プロテインA、CS1移植プロテインAが細胞側のどのインテグリンレセプタ-により認識されるかを、種々の抗インテグリン抗体を用いて検討した。RGD移植プロテインAに対する細胞の接着は、抗ビトロネクチンレセプタ-抗体で阻害され、抗フィブロネクチンレセプタ-抗体では微弱にしか阻害されなかった。一方、CS1移植プロテインAに対する接着は、抗フィブロネクチンレセプタ-抗体で阻害され、抗ビトロネクチンレセプタ-抗体で阻害されなかった。また、それぞれの接着タンパク質に接着・伸展した細胞の接着班部位には、RGD移植タンパク質の場合はフィブロネクチンレセプタ-とビトロネクチンレセプタ-の両方が、CS1移植タンパク質の場合はビトロネクチンレセプタ-が局在していることが判明した。
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