研究概要 |
C型肝炎の原因ウィルスと考えられるHCVのゲノム構造の一部を含む米国カイロン社の特許情報を基に、日本型(HCVーJ)ゲノムの解析を行なった。RTーPCR法による遺伝子増幅とcDNAライブラリ-のスクリ-ニングにより得られたcDNAクロ-ンの解析によりHCVーJゲノムの全塩基配列を決定した。HCVーJゲノムは全長9422塩基の1本鎖RNAであり9030塩基よりなる長い読枠を有していた。アミノ酸レベルではフラビウィルス科のものと類似した配列が一部に認められたが、塩基配列レベルでは既存のウィルスとの顕著な相同性は認められず、HCVーJはフラビウィルス科の新しい属に帰属する事が判明した。米国型(HCVーUS)と比較すると塩基配列で24%,アミノ酸配列で15%異なっており、HCVーJはHCVーUSとは別のウィルス型として分類されるものと考えられた。HCVーJゲノムの3'末端側に位置し、RNAポリメラ-ゼをコ-ドすると考えられる領域の一部をRTーPCR法により増幅し塩基配列を解析した。日本各地より入手した16検体(肝炎患者血清及び肝癌患者肝臓)より19株のHCVーJゲノムを得た。この領域はHCVーUSと比較すると14〜17%異なり比較的保存された領域と考えられたが、19株のHCVーJゲノム間でも塩基配列で2.5〜11%,また7%以内のアミノ酸配列の相違が認められ、ゲノムの多様性を明らかにした。3例の血友病患者からは輸入血液製剤由来と考えられるHCVーUS型ゲノムが検出され、それらの間でも塩基配列レベルで2〜8%の違いが認められた。また、エンベロ-プをコ-ドすると考えられる領域についても同様に解析したところ、ゲノムの多様性はさらに顕著でウィルス株間で12〜31%のアミノ酸配列の相違が認められ、特に2ヶ所の高変異領域を見出した。これらの変異領域とウィルスの持続感染機構との関係が今後の研究課題である。
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