Oーアセチル転移酵素に焦点を絞り、この遺伝子のクロ-ニングを試みた。本酵素遺伝子のクロ-ニングには二つの方法が考えられた。一つは酵素を精製後、そのアミノ酸配列を基にクロ-ニングする方法であり、もう一つはOーアセチル化糖鎖に対する特異モノクロ-ナル抗体を作製して直接発現クロ-ニング法を用いる方法である。初年度、以下の実験を行った。(1)Oーアセチル転移酵素の精製:上記ヒトメラノ-マ細胞株を材料にして本酵素の局在を検討したところ、ミクロゾ-ム分画に約85%、サイトゾ-ル分画に約15%の活性が検出された。この結果は、本酵素はゴルジ-酵素であることを示した。(2)抗OーアセチルーGD3特異モノクロ-ナル抗体の作製:ヒトメラノ-マ細胞株よりOーAcーGD3を精製後マウスに免疫し、常法に従いOーAcーGD3特異マウスモノクロ-ナル抗体産生ハイブリド-マ株を樹立した。本抗体はlgM(κ)でOーAcーGD3と特異的に反応し、その他のガングリオシドや中性糖脂質とは全く反応しなっかった。メラノ-マ細胞株との反応性を解析したところ、ある種のヒトメラノ-マ細胞株に大量に発現されていることが判明した。以上の結果に基づき、直接発現クロ-ニング法を採用することにした。次年度、宿主細胞の候補であるCOS1細胞とCOP5細胞の糖脂質の発現を本研究部門で樹立された多数の抗ガングリオシド・モノクロ-ナル抗体を用いて解析した。その結果、これら細胞にはOーアセチル化ガングリオシドGD3を発現していないことが判明した。更に、COS1細胞はGM3、GD3を発現していたので、この細胞は宿主細胞に適当と判断された。次にメラノ-マ細胞よりmRNAを抽出し、CDM8ベクタ-に組み込んだcDNAライブラリ-を作製した。COS1細胞に発現させ、パンニング法で発現陽性細胞をスクリ-ニングしている。現在のところ、未だ安定したクロ-ンを得ていない。
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