研究概要 |
細胞性因子によるアデノウイルス12型(Ad12)DNAの転写と複製の調節機構について以下に述べる研究成果が得られた。 1.Ad12DNAの転写と複製を調節する細胞性因子の同定。 (1)NFーIの同定。 Ad12E1A遺伝子の2つの転写のうちD転写を特異的に促進する因子をエ-ルリッヒ腹水癌細胞の核抽出液中に見い出し、精製を行った。精製標品は48,53,55kDaの3つのペプチドを含んでいた。この因子はAd12DNAの左端を1番としたとき22番〜48番の領域に結合したが、この配列はHeLa細胞のNFーIが認識する配列と一致した。さらにこの因子は、Ad2DNAの複製開始反応とHeLaNFーIと同程度に促進した。よってこの因子はマウスNFーIであると結論された。マウスNFーIはAd12DNAの左端付近に結合することにより、転写と複製両反応を調節すると考えられる。 (2)ESFー1の同定。 HeLa細胞の核抽出液中に存在するESFー1と名づけた因子が、Ad12E1A遺伝子のP転写を促進することが分った。この因子はTATAボックス直前の5'ーTGTCAー5'配列に結合する。 2.Ad12E1A遺伝子転写の自己調節。 DNAトランスフェクションにおいて、135mRNA由来のE1Aタンパクが自己遺伝子転写を約10倍促進することが分った。12SmRNA由来のタンパクは影響を与えなかった。E1Aタンパクの作用を解析するためにAd12E1Aタンパクの大量生産を、酵母と用いた系により行った。現在まで粗抽出液中にそれらしいペプチドを検出でき、抗体による確認を行っているところである。得られたE1AタンパクとNFーI、ESFー1との相互作用を調べる予定である。
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