1.ラット肝アシルーCoAオキシダ-ゼの抗高脂血薬剤による誘導の分子機構を明らかにするため、トランスフェクション実験とタンパク質結合実験によって、この酸素の遺伝子の5'上流域に存在する転写調節DNA配列を同定することを試みた。2.まずラットヘパト-マH4IIEC3細胞の培養液に抗高脂血薬剤に一種シプロフィブレ-トを添加することによって本酵素がmRNAレベルで顕著に誘導されることを見いだし、この細胞がin vitroの誘導実験に有用であることを示した。3.オキシダ-ゼ遺伝子の5'上流域の種々の部分の配列をクロラムフェニコ-ルアセチルトランスフェラ-ゼ(CAT)遺伝子の上流につないだ組換えプラスミドを作成し、リン酸カルシウム法によってH4IIEC3細胞に導入した。培地にシプロフィブレ-トを添加した時および添加しない時のCATの発現量を測定することによって、誘導能および基礎発現活性をモニタ-した。その結果、本遺伝子の上流域には少なくとも3つの役割の異なる領域が存在することがわかった。そのうち転写開始点の上流639塩基から472塩基にかけての部分には、抗高脂血薬剤応答性エンハンサ-としての機能があることがわかった。4.このエンハンサ-領域の配列をプロ-ブとして、ラット肝臓核抽出液を用いたフットプリントアッセイ、およびゲルシフトアッセイを行い、2つのタンパク質結合部位を見いだした。5.上記の2つのタンパク質結合部位の配列をもつオリゴヌクレオチドを合成し、これを基礎プロモ-タ-と共にCAT遺伝子につないだものをH4IIEC3細胞にトランスフェクションして発現を調べた。その結果、1つの配列は強い転写促進活性をもつが誘導能は低いこと、もう一方は転写を抑制するが、2つの配列が共存することによって高い誘導能が得られることが明らかになった。
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