研究概要 |
平成2年度は、顆粒球コロニ-刺激因子(GーCSF)受容体のcDNAおよび遺伝子をクロ-ン化して、その分子構造,遺伝子構造を明かにすることを目的とし、以下の成果を得た。 まず、COSー7細胞を用いた発現クロ-ニング法により、マウスNFSー60細胞のcDNAライブラリ-からGーCSF受容体cDNAを単離した。次いで、このcDNAをブロ-ブとしてヒトU937細胞および胎盤のcDNAライブラリ-からヒトGーCSF受容体cDNAを単離した。これらのcDNAを発現させたCOSー7細胞では ^<125>IーGーCSFの高親和性結合(Kd=290〜550pM)が観察された。塩基配列の解析より、GーCSF受容体は812アミノ酸残基(マウス)あるいは813残基(ヒト)から成り、単一の膜貫通ドメインを有する膜タンパクであることが明らかになった。細胞外ドメインは免疫グロブリン様ドメイン,他のサイトカイン受容体との相同性を有するドメイン,3個のフィブロネクチンタイプIIIドメインから構成され、細胞質ドメインはILー4受容体やILー6受容体β鎖のそれと有意な相似性を示した。また、この他の分子種として、U937細胞からは膜貫通ドメインを欠失した分泌型の受容体と考えられるcDNAが、胎盤のライブラリ-からは細胞質ドメインに27アミノ酸残基の挿入を含むcDNAが得られた。Northern解析の結果、GーCSF受容体の発現は骨髄細胞,骨髄性白血病細胞および胎盤で認められた。特に胎盤では骨髄性白血病細胞の約20倍のmRNAが発現しており、GーCSFが胎盤の細胞にも作用する可能性が示唆された。 さらに、GーCSF受容体cDNAをプロ-ブとしてヒト遺伝子ライブラリ-よりの染色体遺伝子を単離した。構造解析の結果、ヒトGーCSF受容体遺伝子は全長約18kbにわたっており、17個のエクソンから成ることが明らかになった。また、染色体マッピングにより、GーCSF受容体遺伝子はヒト染色体1番短腕(1p35ー34.3)に存在することが示された。
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