研究概要 |
本研究では、顆粒球コロニ-刺激因子(GーCSF)受容体の構造と機能を明らかにすることを目的とし、以下の成果を得た。まず、発現クロ-ニング法によりマウスGーCSF受容体cDNAを単離し、このcDNAをプロ-ブとしてヒトGーCSF受容体cDNAを単離した。塩基配列の解析から、GーCSF受容体は約800アミノ酸残基から成り、単一の膜貫通ドメインを有する膜タンパクであることが示された。細胞外ドメインは免疫グロブリン様ドメイン,他のサイトカイン受容体との相同性を有するドメイン,3個のフィブロネクチンタイプIIIドメインから構成され、細胞質ドメインはILー6受容体β鎖(gp130)の細胞内領域と有意な相似性を示した。また、GーCSF受容体染色体遺伝子を単離し、さらに染色体マッピングを行なった。その結果、本遺伝子は17個のエクソンから構成されており、ヒトでは第1染色体短腕(1p35ー34.3)に、またマウスでは第4染色体に存在することが示された。次いで、クロ-ニン化したGーCSF受容体の細胞増殖,分化における機能を調べる目的で、種々の細胞にGーCSF受容体cDNAを導入し、これを構成的に発現する形質転換株を樹立した。ILー3依存性骨髄球細胞株FDCーP1およびproーB細胞株BAFーB03の形質転換株ではGーCSF依存性の細胞増殖が観察され、導入したGーCSF受容体がILー3受容体と同様に機能することが示された。また、FDCーP1ー形質転換株をGーCSF存在下で培養することにより、Mac1,Mac2分化抗原の誘導やThy1,F4/80抗原の発現抑制が観察され、導入したGーCSF受容体が細胞増殖のみならず細胞分化にも機能することが示唆された。さらに、いろいろな変異GーCSF受容体cDNAをFDCーP1細胞で発現させてGーCSF結合性および応答性について解析した結果、GーCSFの認識には細胞外領域のサイトカイン受容体相似ドメインが必須であること、GーCSF依存性細胞増殖には細胞質ドメインの76アミノ酸残基からなる領域が不可欠であることが明らかになった。
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