研究課題/領域番号 |
02680176
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研究機関 | 放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
大山 ハルミ 放射線医学総合研究所, 障害臨床研究部, 主任研究官 (70160645)
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研究分担者 |
三田 和英 放射線医学総合研究所, 生物研究部, 主任研究官 (30159165)
山田 武 放射線医学総合研究所, 生物研究部, 室長 (30166714)
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キーワード | 自爆死 / apoptosis / 胸腺リンパ腫 / 胸腺細胞 / 放射線誘発細胞死 / クロマチンDNA断片化 / 放射線高感受性細胞 / 細胞生存曲線 |
研究概要 |
放射線照射後数時間で生じる胸腺細胞の細胞死は典型的自爆死(apoptosis)であり、放射線誘発細胞自殺過程と解される。前年度はこの胸腺細胞死発現の分子機構について解明を進めた。本年度は胸腺細胞の研究に加え、多種類の培養細胞の放射線誘細死についても検討した。その結果、放医研において最近放射線誘発胸腺腫から樹立された3SB他数種の胸腺リンパ腫が、きわめて放射線感受性高く自爆死を起こすことを見いだした。これらの細胞の自爆死を、前年度確立した自爆死検出法であるクロマチン凝縮性染色により主として調べた。その結果、X線5Gy照射、4時間培養後、最も感受性の3SB細胞は80%以上自爆死を起こすことがわかった。細胞死は線量依存性に増加、僅か0.1Gy照射で対照非照射の2倍以上の死細胞が検出された。胸腺細胞は10Gy照射、4時間の自爆死が通常約50%であるのに比較し、非常に放射線高感受性である。また、自爆死の特徴的生化学的変化であるDNAのヌクレオソ-ム単位の継片化がアカロ-スゲル電気泳動で検出された。さらに、個々の細胞のDNA断片化を前年度新たに開発したミクロゲル電気電動法により検出した。その結果、DNA分解細胞の割合と、クロマチン凝縮細胞の割合が一致し、生化学的方化と形態学的クロマチン変化の関連がリンパ腫の自爆死でも確認された。また、これらのリンパ腫の自爆死もタンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドにより一部抑制され、その細胞死も胸腺細胞同様タンパク質生合成依存性であることが示唆された。リンパ腫細胞が胸腺細胞と非常に異なるのは、コロニ-形成の測定が可能である点であり、X線照射によるコロニ-形成能で測定した生存曲線は、3SBは肩がなくD〓は0.3Gyであった。これは報告されている細胞中最も放射線感受性の細胞の一つである。今後、胸腺細胞死機構の解析と平行して、これら胸腺リンパ腫を用いた研究も進める予定である。自爆死の細胞周期依存性の有無、化学療法剤、重粒子も含むの放射線の効果の発現等における自爆死の関与等、多岐にわたり研究を考えている。
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