研究概要 |
1.前年度はAIN試料を用いて,この中に発生する格子欠陥を原子炉照射や真空蒸着装置を用いて調べた。本年度は上記予備的実験とビッカース硬度計の設置がなされたことにより,本格的に照射導入欠陥と硬度変化の関係を調べることができた。前年度のAINに加えて,本年度はBNについての照射欠陥についての検討も行なった。BNはAINと同じく,高速中性子による原子変位と熱中性子による ^<14>Nによる核分裂損傷が生じるが,BNでは更に ^<10>Bの分裂も生じ格子欠陥が高濃度に生じる物質である。この試料を原子炉の低温状態で照射すると溶融を防ぎながら照射欠陥を導入できる。この方法で照射線量を変えて,試料を照射した。 2.照射済BNの格子欠陥をESR法で検出した。基本的格子欠陥としてはNが格子位置より抜けたN空孔に電子がトラップされている型のアルカリ・ハライドにおけるF中心タイプのものであることがわかった。また,この格子欠陥の回復エネルギーは約1.8eVであることが確められた。この試料中に発生するESR法で検出された点欠陥濃度は,10^<20n>/cm^3であることが標準試料との比較から見積られた。 3.中性子照射量を変化させた,すなわち照射導入欠陥濃度を変化させてある試料について,ビッカース硬度が測定された。未照射の場合,硬度は4×10^3kg/mm^2であるが,照射量の増加に応じてこの硬度が増加し,照射処理後においては約1.7倍になることが分かった。又これを焼鈍すると硬度は再び低下していくことも確かめられ,この場合試料の機械的特性に照射導入欠陥が密接に関連していることが明らかになった。すなわち,これらの結果は中性子照射処理法により,高硬度材としてのBN等のセラミックスの硬度を更に増強させる可能性を示唆するものである。今後更にこれらについて検討を進めていく予定である。
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