1.二オブ膜中の準粒子及びフォノン相互作用の解析 x線が超伝導体に入射してエネルギ-を付与すると、準粒子及びフォノンが多数生成される。X線によるエネルギ-付与では、一定のエネルギ-を局所的に与えることになる。このような場合の準粒子及びフォノン相互作用の定量的な解析は、トンネル接合によるx線検出特性の基礎過程を把握するために重要なことである。従来、x線入射の場合に、準粒子及びフォノンのエネルギ-分布を考慮した解析は行われてこなかった。当グル-プでは、有感厚さ1.2μmのトンネル接合を用いて、x線による信号波形が実験で得られている。本研究では、新しい試みとして、準粒子フォノン相互作用の解析のために準粒子及びフォノンのエネルギ-分布を考慮した結合ボルツマン方程式を適用した。実験で得られた波形との比較から、多結晶膜に特有の準粒子の緩和現象の時定数が求められた。この成果は1990年応用超伝導会議で発表された。 2.トンネル接合の製作とその結果 薄い二オブ膜を用いたトンネル接合を、フォトリソグラフィ-法によって製作した。製作機器に不調があったので製作が遅れたが、秋には試作を終えることができた。温度4.2Kでの特性試験では若干のばらつきはあったもののかなり良好なトンネル接合と思われた。しかしながら、温度0.4Kでは漏れ電流が大きく、x線検出に十分な性能にはならなかった。次年度は使用する製作機器を見直し製作方法を改良して、特性のそろったトンネル接合が製作できるようにする。
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