当該年度は、まず、今までに報告されているニオブ及びスズのトンネル接合による放射線検出特性を再検討した。この検討から、ニオブによるトンネル接合では、スズの場合と違い、準粒子のトラップ現象が大きいことが明らかになった。この現象は、従来確立されていたと思われていた準粒子・フォノンの理想的互作用からは予想されていなかった現象である。これに関連して、準粒子・フォノン相互作用に関する成果を公表した。 実験的には、ニオブ系多層構造トンネル接合の基礎研究として、アルミニウム/アルミニウム酸化物/アルミニウムトンネル接合の製作特性を調べた。これには、再現性が良く良好なトンネル接合の製作が期待できるフォトリソグラフィ-法を採用し、陽極酸化法を併用して製作することした。実際の製作過程では、アルミニウムの場合には、フォトレジスト現像時に現像溶液でアルミニウムが溶解・変質する現象があること、並びに、フォトレジストの耐電圧性に問題があることが明らかになった。これらの問題によってアルミニウムトンネル接合製作は予定どおりには進まなかったが、製作過程の工夫によりこの問題がある程度回避できた。製作したアルミニウムトンネル接合を、温度0.4Kで特性試験し、アルミニウムの超伝導エネルギ-ギャップが現れることが確認された。しかしながら、トンネル障壁にマイクロショ-トの影響が観察され、今のところ放射線計測に使用できる性能にはなっていない。
|