超伝導トンネル接合による放射線検出器は、半導体による検出器よりも優れたエネルギー分解能になることが原理的に予想されている。本研究ではニオブ系トンネル接合を放射線計測に用いるため、次のように基礎研究を行った。 フォトリソグラフィー法によって簡単な構造をしたNb/A1-A10x/NbのX線検出用トンネル接合を製作し、これによって5.9keVのX線を検出した。準粒子およびフォノンの相互作用を結合ボルツマン方程式を用いて解析したところ、準粒子およビフォノンのエネルギー分布は約10psで互いに平衡な分布になることが分かった。また、バルクの超伝導体内と同じ相互作用が起こりしかもバックトンネリング効果がないとすると、信号電子1個当りを生成するのに必要な平均エネルギーεは3.2△であることが分かった。 現在の技術的状況のなかでニオブ系トンネル接合で良いエネルギー分解能を得るために、放射線検出用トンネル接合の設計の最適化を試みた。その結果、トンネル接合の常伝導抵抗に最適値があり、常伝導抵抗がそれより大きくても小さくてもエネルギー分解能は劣化することが示された。 トンネル接合による放射線検出器の高度化のために、多層トンネル接合の製作したが、実験装置の不調が原因して良好な接合を製作できなかった。超伝導体の材質については、超伝導特性からはアルミニウムが注目されることが分かったが、フォトリソグラフィー法による高性能アルミニウムトンネル接合の製作には技術的な問題が残されている。
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