平成4年度における研究計画は、平成2年度および3年度に得られた研究成果を基とし、医薬品製剤の放射線滅菌(または、殺菌)における技術的問題点の整理、具体的照射条件の提案、照射による医薬品の活性変化の推算法、ならびに放射線分解物の検出方法であり、以下に述べる研究成果を得た。 1)放射線滅菌(または、殺菌)における技術的問題点の整理 医薬品の微生物汚染で問題となる菌種(薬事法第56条の製造販売の禁止の項において明記されている病原微生物のほか、特定菌:大腸菌群、緑膿菌、ブドウ球菌)のγ線に対する感受性は大きく、また、細菌および真菌ごとに定められている一般生菌数の限度レベルといくつかの医薬品原料汚染菌について調べた放射線感受性を参考にすると、食品照射における容水線量10kGyの線量で十分対処可能である。さらに、照射に伴う医薬品の分解率(又は、活性変化)は、上記の線量では分析の精度範囲内であり、これについても技術的には問題はない。 2)放射線滅菌(または、殺菌)における具体的照射条件の提案 放射線源としてγ線を用いる限り、医薬品の原料および製剤のいずれにおいても照射そのものは簡便に実施できる。しかし、線源の規模が大きくなるので、各事業所の製薬工程に組込むことは経済的に得策ではない。したがって、原料を各製薬工場に入荷する前に殺菌操作を依頼するのが望ましい。さらに、被照射物中の含有水分量を予め知っておくことが必要である。 3)照射による医薬品の活性変化の推算法 これについては、昨年度のRadioisotopes誌に投稿報告した。さらに、酵素製剤への応用が可能であることを含糖ペプシンを用いて調べ、今年度のRadioisotopes誌に投稿報告した。 4)放射線分解物の検出方法の確立 γ線照射によって生じる放射線分解物の検出については、殺菌に必要な値の約20倍の線量ではゲルろ過とHPLC法を組合せることによって、検出が可能である。さらに、共存水分が関与する分解物ではより低線量で検出可能である。
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