本研究では農作物のうち、とくに野菜のF_1品種を対象とし、その空間的拡散過程を計量的・地域生態論的に解明することを目的とした。 研究方法としては、農林省や県庁での統計資料の収集という広域調査と特定の地域での集中調査を実施した。県庁での資料収集は岩手、茨城、神奈川および新潟の諸県で実施した。集中調査は、神奈川、新潟県で実施した。本研究の成果は、当初の研究目的を必ずしも十分解明したとは言い難いが、本報告書のみられるように、その萌芽をみることができる。すなわち、以下の諸点が明らかになった。 一般に、野菜は連作障害に弱いため、耐萎黄病などのF_1品種の普及率が高い。青首ダイコンはダイコンのF_1品種であり、その代表品種はタキイ種苗作出の耐病総太である。結果的に青首ダイコンは、(1)岡山近郊で栽培され、(2)北陸・畿内、(3)四国・九州と西日本で栽培された後、(4)北海道、(5)東北・高冷地を経て、(6)関東平野に拡がった。食味がよく市場性の高い青首ダイコンは、その後各種苗会社によって作出され、全国的に栽培されるようになった。 青首ダイコンは、種苗会社の本社・支社および系列下の種屋などの販売網を通じて、多核的拡散した。つまり、1地域における青首ダイコンの採用は即時的にほぼ4年で行きわたることが判明した。このことは、伝統的なサツマイモの伝播とは大きく異なる。 漬物・切り干しなど加工ダイコンの大型産地では青首ダイコンの採用に抵抗し、白ダイコンを栽培し続けている。一方、三浦半島などの既製の有名産地も抵抗してきたが、現在では青首ダイコンに変わった。したがって、青首ダイコン採用のタイムラグは産地の事情を繁栄した抵抗値に関連することが判明した。
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