研究概要 |
本研究は,都市の定義に関する根源的問題として,都市の機能・都市の規模・都市の範囲などにわたって広く採用されている指標の都市人口が概念的にどのような状況の置かれているのか,また都市人口と都市住民の関係がどのように変動し,都市住民の意識に影響をあたえているかを政治地理学の視点から明らかにすることを目的としておこなったものである。ここで概念上の問題指摘は,今年度に一応のまとめを行うことがるきたので,別褐の論文リストにあげることとした。 すなわち都市はおおきく階層構造を形成する領域都市と機能的に特化した特化都市の2群に分けられた。また昼夜間人口の分析から,昼間人口を受け入れる中心都市と,夜間人口の生活の場となっている周辺都市とを分類することができた。とくに重要な視点として抽出されたのは,東京・大阪・名古屋などの巨大都市が,領域都市の高次に位置し,管理機能に特化した都市であるため,周辺に膨大な周辺都市群を率いており,ここに帰属意識とのずれを持つ住民が集積していることである。そこで,今年度の研究対象を,巨大都市圏に存在する中心都市とそれを取り巻く周辺都市にしぼり,資料の収集とヒヤリングをすすめた。その結果,次年度に向けての作業仮設として,周辺都市住民は,居住都市に帰属意識を持つ,主婦・自宅就業者層と中心都市に帰属する意識の強い中心都市就業者層に分裂し,それが選挙の投票率などにあらわれないか,ということが摘出された。したがって,都心への流出通勤者の多い都市では,各級選挙の中でも市区町村議会選挙より国会あるいは中心都市の選挙への関心が高い層の存在が指摘できるはずである。
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