本研究では、昭和57年商業統計の東北地方6県・九州地方7県小売商個票(76379商店分)を用いて、市町村別の独自資料「産業中分類別・仕入先別(地域・組織)小売商店数」を、長崎大学総合情報処理センタ-のメインフレ-ムコンピュ-タおよびその上で作動する統計パッケ-ジソフトウエアANALYST、パ-ソナルコンピュ-タで作動する表計算ソフトウエアEXCELを用いて分析し、中心都市(地方2次生活圏中心都市および法人組織小売商100店以上の都市)・2次生活圏地域(ただし中心都市を除く)について、東北地方110地域・九州地方116地域の小売商の仕入先地域・組織を把握した。 都市間によって、仕入先構造に大きな違いが見られたのは仕入先地域であった。都市間結合関係という視点でまとめると、中央依存度が高い順に、広域中心都市(仙台・福岡)、県庁所在地級都市(青森・弘前・八戸・盛岡・秋田・山形・福島・郡山・いわき、佐賀・長崎・佐世保・熊本・大分・宮崎・鹿児島)、2次中心都市・2次生活圏域という、階層的秩序が明らかにできた。また、中央依存度は、東北地方全体では東京依存度が14.9%、大阪依存度が0.7%、九州地方全体では東京依存度5.7%、大阪依存度3.8%と、大阪の影響力は西日本地域に偏っていた。さらに、県庁所在地級都市以下の都市階層では、それぞれの地方の広域中心都市への依存度がかなり高いことが判明した。しかし、小売商の仕入れ構造からみた、中央企業の依存度が、昨年度分析した卸売商の依存度ほど、都市発達や都市の階層形成に影響していないことが明かとなった。 また、業種別の小売商の仕入先地域を把握した結果、業種によって中央依存の大きい各種商品・衣服繊維品の業種があることが明かとなった。そして、衣服繊維品などのように流行品を扱う分野では、広域中心都市の勢力は弱く、地方圏の全都市階層の小売商とも、中央企業の勢力圏下にあることが、定量的に明かとなった。
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