研究概要 |
今年度は,前年度収集した買物行動デ-タの解析とその結果の解釈,前年度にひきつづいての関連文献の展望,そして報告書の作成を行なった。結果の概要は次のとおりである。 1.文献研究ならびに数値実験デ-タの分析から,商業中心地の利用行動も含め,個人単位の空間的行動をロジット・モデルで分析することは,個人デ-タを単位地区ごとに集計した地区間の相互作用を空間的相互作用モデルで分析することと同値であることがわかった。すなわち,空間的相互作用モデルは,個人の効用最大化行動を前提にするロジット・モデルによって,ミクロな理論的裏付けが与えられたのである。 2.文献研究によって,ネスティッドロジット・モデルは,買物行動,居住地移動,リクレ-ション・トリップ,工場移転など様々な空間的行動の分析に応用され,個々の場合における段階的意志決定(居住地移動ならば,移動の有無,移動先,入居住居タイプについての3段階の意志決定)の存在が確認されていることがわかった。 3.長崎の大学生と新潟の高校生のCDのレンタル・購買行動を分析した結果,1)店舗選択(専門店か,(生協か),その他か),2)商業中心地選択(大学ないしは居住地周辺か,都心か,その他か),という2段階の意志決定の存在が確認された。すなわち,利用者・購買者は,店舗選択の効用を最大にするように商業中心地を選んでいるのである。なお,金沢の主婦の買物行動については目下分析中である。 以上,2年次にわたる調査研究より,ロジット・モデルを援用した地理学的研究の現況の理解を深めることが可能になったとともに,この方法の問題点(適切なデ-タの収集のむつかしさ)も明らかにしえた。今後は,選択を規制する制約を重視した時間地理学との接点をさぐっていきたい。
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