研究概要 |
北アナトリア断層帯は,アナトリア(トルコ)・プレ-トとユ-ラシア・プレ-トとを境する横ずれ型のプレ-ト境界である.同断層帯の西端部付近には第四紀後期の短縮変形を示す多数の活褶曲が発達するが,これは北アナトリア断層の西端がエ-ゲ海の背弧拡大域に連続するという従来の通説とも,またこの付近で発生する微小地震のメカニズムとも矛盾する.研究代表者らは,断層帯の分岐と地表と地下での断層のgeometryの違いによって上記の矛盾を説明するモデルを提出したが,このモデルからは上記の現象をもたらす原動力とより広域的なテクトニクスとの関係はまだ明らかになっていない.本研究では,この問題を明らかにするために,高解像度で実体視可能な衛星写真の判読と過去3回の野外調査で取得したデ-タを用いて北アナトリア断層帯西部とその周辺地域の活構造の解析を試みた.本年度はMuduru ValleyからIsmetpasaまでの間の衛星映像(Zoyuzkarta社Cosmos映像)を取得し,解析を行なった.その結果,以下の点が明らかになった: 1.前年度に解析を行なったMudurnu Valley以西の地域と異なり,北アナトリア断層帯は直線性の良いほとんど単一のトレ-スをなす.衛星映像上で検出できるトレ-スは,1967,1657,および1944年の地震断層とほぼ正確に一致する. 2.前年度のSPOT Panchromatic映像を用いた判読結果と同様に,完新世の地形面上の変位地形は検出できないが,実体視することにより更新世の地形面上の変位地形は検出可能であった. 3.断層帯に沿う幅10数kmに及ぶpressure ridge状の地形が衛星映像上で明瞭に検出された.これは大規模横ずれ断層のテクトニクスの解明する上で,重要な意義を持つと考えられる.
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