研究概要 |
今年度は,本研究(3年計画)の2年目の年であり,前年度にひき続き南九州各地(鹿児島県鹿屋市・加世田市・鹿児島市・国分市,宮崎県都城市,熊本県人吉市など)で,シラス(入戸火砕流堆積物)台地の地形,台地上部を構成する二次シラス層およびそれを覆う火山灰層などの性状を把握するための野外調査を行い,各地の基礎的な資料の整備に努めた。特に鹿屋市付近の笠野原台地は,最も代表的なシラス台地であり,火砕流台地の生成過程を知る上で極めて重要と考えられるので,重点的に野外調査を行った。以下,本年度の主な成果の概要を述べる。 笠野原台地については,これまでの調査で,地形面の分布状態,二次シラスおよびそれを覆う火山灰層の性状をほぼ把握できた。 二次シラス層の直上にある最古の火山灰層(古土壌層)については, ^<14>C年代測定の結果,約1.7万年前および1.8万年前という二つの年代値が新たに得られた。これらは,二次シラスの生成時期がシラスの堆積直後であるという考えと調和する重要な成果である。また,シラスそのものの堆積年代についても,新たに得られた試料の ^<14>C年代測定の結果,約2.6万年前および2.7万年前という値が得られた。これらの年代は,従来一般的に言われてきた約2.2万年前という年代よりも数千年古く,シラスの堆積年代については今後さらに検討が必要であることが判明した。 九州山地南西部地域など,噴出源の姶良カルデラから70Km以上も離れた場所に,シラスの局所的な分布地があることは,前年度までの調査でも一部知られていた。これらの遠隔地におけるシラスの当初の分布範囲を知ることは,火砕流堆積後の開析過程を知る上でのみならず,火砕流の流動・堆積機構を知る上でも重要な意義があるので,今年度もひき続き野外調査を行った。その結果,九州山地南西部地域では,当初,入戸火砕流がかなり普遍的に堆積したことが明らかとなった。
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