研究概要 |
我々はこれまでに、羽化後視細胞が日を追って変性してゆくショウジョウバエの突然変異rdgAでは、イノシト-ルリン脂質代謝の関連酵素であるDGキナ-ゼが複眼で全く欠損していることを報告し、遺伝子量の実験からrdgA遺伝子がDGキナ-ゼをコ-ドしている可能性を示唆してきたが、この点が証明されれば細胞変性の原因のひとつが解明されたことになる。そこでショウジョウバエ頭部からDGキナ-ゼを抽出して精製し、アノミ酸配列を決定してその遺伝子をクロ-ニングすることを試みることにした。これまでにDGキナ-ゼの精製がほぼ終了したので、近いうちにそのアミノ酸配列が決定されてクロ-ニングにとりかかれると思われる。また精製されたショウジョウバエのDGキナ-ゼの性質を調べたところ、これまでに報告されているラットやブタのものとはかなり異なっていること、分子量が110Kダルトンであることが明らかになった。 DGキナ-ゼ活性の欠損が細胞変性の原因であるとすると、DGの蓄積,あるいはDGキナ-ゼによる産物であるホスファチジン酸の欠損が細胞に何らかの影響を及ぼしていると考えられる。まずDGが蓄積された場合の効果をプロテインキナ-ゼCの活性化という観点から培養細胞を用いて調べてみた。その結果、DGキナ-ゼの阻害剤であるR59022では変性を起こすが、プロテインキナ-ゼの活性化剤であるTPAでは変性を起こさなかった。そこで今後はこれらの細胞でプロテインキナ-ゼ活性を測定し、DGキナ-ゼとプロテインキナ-ゼCとの関連や,ホスファチジン酸の欠損の効果などを調べてゆくつもりである。
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