1.細胞変性にはプロテインキナ-ゼC(PKC)活性が関与している可能性があることが分かったので、その点を調べた。ガン細胞は大豆のホスファチジルイノシト-ル(PI)のリポソ-ムで処理すると変性することが知られているが、中には抵抗性を示す細胞がある。そこでそれら2種の細胞をPIで処理した時のPKC活性を測定した。細胞内に取り込まれたPIは分解されてPKC活性化剤になるのことが知られているので、PI処理によりPKCは活性化されると考えられている。またPI処理をした時の細胞内Caイオン濃度も測定してみたが、変性をおこす細胞では処理後3時間程で濃度の上昇が始まり、数時間持続した。しかし変性をおこさない細胞では変化がみられなかった。このことからも、PI処理により変性を起こす細胞のPKC活性は上昇することが予想された。しかし結果は、変性を起こす細胞でも、起こさない細胞でも、可溶性分画、膜分画ともにPKC活性の低下がみられた。PI処理により変性を起こす細胞ではその低下が大きく、特に膜分画で著しかった。またPKCの阻害剤を2種の細胞に添加すると、PI処理の場合と同様の結果になった。こうした結果はPKC活性の低下が細胞変性に関わっていることを示している。さらにPI処理により変性を起こさない細胞はガン遺伝子であるcーmycが発現していることを考えあわせると、細胞変性にも遺伝子の発現が関わっているこ可能性もあり、新たな研究課題として取り組んでゆきたい。 2.PKC活性とジアシルグリセロ-ルキナ-ゼ(DGK)活性の関連を調べるために、ショウジョウバエの突然変異の中で複眼のDGK活性を欠失しているrdgAにおけるPKC活性を測定した。その結果、複眼のPKC活性は脳に比べてかなり提かったので、頭部全体で活性を測定するとrdgAではPKC活性の低下がみられたが、それが複眼の活性を反映しているかどうかについて、さらに検討が必要になった。
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