1.我々はショウジョウバエの視細胞が羽化後日を追って変性する突然変異、rdgAにおいて欠失している分子を検索し、その結果、rdgA遺伝子の遺伝子産物がDGキナ-ゼである可能性を見出していた。この点を証明するために、DGキナ-ゼを精製し、そのアミノ酸配列を決定することを試みた。ショウジョウバエの頭部よりDGキナ-ゼを抽出して、高速液体クロマトグラフィ-で精製したが、出発材料が少量であったことと、DGキナ-ゼが非常に不安定な酵素であったことにより、均一にまでは精製はできなかった。しかし分子量115kdのタンパク質であることは明らかになった。そこで途中のステップを省略することにより、より多くのDGキナ-ゼを得ることを試みたが、アミノ酸配列を決定できるだけの十分な量は得られなかった。 2.マウスやラットの小脳に変性が起こた時にイノシト-ルリン脂質代謝に変異が見られるかを、数種の抗体を用いて免疫組織化学的に調べた。小脳のプルキンエ細胞が変性するマウスの突然変異、pcdの小脳では、プルキンエ細胞に特異的に存在することが知られているイノシト-ル三リン(IP_3)結合タンパク質とプロテインキナ-ゼC(RKC)ーIの染色は見られなかった。また、イシノト-ル二リン(PIP_2)はプルキンエ細胞以外では差は見られなかった。薬物でラットの小脳に変性を起こさせた時のPIP_2の抗体の染色性は正常と同じであった。 3.がん細胞はPIリポソ-ムで処理すると変性を起こすことが知られているが、これにPKC活性が関与している可能性があるので、その点を調べた。変性を起こす細胞でも、起こさない細胞でも、可溶性分画、膜分画ともにPKC活性の低下がみられたが、PI処理により変性を起こす細胞ではその低下が大きく、特に膜分画を著しかった。また、細胞内Caイオン濃度も測定してみたが、変性を起こす細胞ではPI処理後3時間程で上昇がみられた。
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