原生動物の一種であるミドリゾウリムシについて、その光感受性イオンチャンネルの性質を調べた。ミドリゾウムシは、適度の光強度刺激に対しては、膜の過分極向きの電位変化をひきおこすが、強い光強度刺激では反対に膜の脱分極向きの電位変化をひきおこす。このような過分極、脱分極向きの電位変化は、それぞれ、セン毛膜と細胞体膜上にあるイオンチャンネルによって発生していることが、我々の研究によって明らかにされてきている。それぞれのイオンチャンネルの種類を知るために膜電流固定法を用いて調べると、セン毛の過分極応答はKチャンネル、細胞体の脱分極応答はCaチャンネルが開くことにより発生していることが分った。これらのチャンネルのさらに詳しい解析を行なうために膜電位固定法によって光刺激にともなう電流の解析を試みたが、S/N比がよくないために信頼性の高い結果がこれまでのところ得られていない。ひきつづきノイズレベルの小さな記録を取る試みを続ける予定である。 このゾウリムシからセン毛部分のみを分離して集めることが可能である。そこで、高木(阪大、教養部)に協力していただき、セン毛のイオンチャンネルを人工膜にうめ込む方法によってイオンチャンネルの同定を試みた。そうすると単一分子レベルで、Kチャンネル開閉にともなう電流が記録された。このチャンネルが光感受性のものかどうかさらに詳しい解析を行なう予定である。 これらの研究と並行して、ミドリゾウリムシの光感受性物質がロドプシンであるかどうか検討した。この細胞からレチナ-ルが抽出されたこと、またカエルロドプシン抗体と反応すること等の結果が得られたので、光感受性物質が、ゾウリムシでもロドプシンである可能性が示された。
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