研究概要 |
本研究の目的「相同組み換えに関与する因子の実体を明らかにし、それを利用して効率のよいGene Targetingの系を開発する。」に即して、本年度は特に相同組み換えにシスに作用する領域(以下「シス領域」)の探索を行なった。[I]「研究計画」に即し、マウスHPRT遺伝子中にNeo^r遺伝子の挿入を持つpRV9.1(Thomas and Capecchi,1987)を改変し、シス領域クロ-ニングベクタ-を作成した。次に、上記ベクタ-のHPRT遺伝子に近接した部位にマウスゲノムDNAを挿入したライブラリ-を作成し、C57/BLマウス由来の細胞に導入してNeo耐性、6ーチオグアニン耐性細胞を得た。現在、この細胞からシス領域の回収を試みている。[II]上記スクリ-ニングに加え、特別な塩基配列、構造をとっているDNAがシス領域として機能するか否かを直接検定するために、マウスの相同組み換えのホットスポットとしての可能性が指摘されているミニサテライトDNA、ZーDNA等を合成し、上述のシス領域クロ-ニングベクタ-に組み込み、これらのDNA配列が相同組み換え頻度を上昇させ得るか否かを検討中である。[III]高等真核生物の相同組み換え効率の上昇に巨大DNA分子が有効であることがCapecchiらにより報告されている(Science,1989)ので、我々は巨大YACクロ-ンを用いたGene Targeting系の開発も進めている。ここでも相同組み換え体の選別が容易なHPRT遺伝子を利用した。そのためにヒト染色体としては、HPRT遺伝子が存在するX染色体のみを含むヒト.CHO雑種細胞を用いてYACライブラリ-を作成し(Wada et al.,1990;Abidi et al.,1990)、HPRT遺伝子を含むYACクロ-ンを単離した。現在、ヒト培養細胞へのYACクロ-ンの導入条件を検討中である。
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