研究概要 |
昨年度より行っている大腸菌でのニワトリリゾチ-ム断片ポリペプチドの発現において、種々のIPTG濃度や培養温度を試したが、可溶化状態への発現はみられなかった。これらのポリペプチドはジスルフィド結合開裂下、天然リゾチ-ムに比べ、αーヘリックス含量が減少し、βーシ-ト含量が増加しているCDスペクトルを示した。GuHCI変性曲線より、この「残存」構造は多くの相互作用により協同的に形成されるような三次構造ではない事が示された。ポリオ-ルやアルコ-ルの添加は二次構造量を増加させた。変性・還元状態で精製したポリペプチドの再生(再酸化)反応において、ポリオ-ルやアルコ-ルを共存させると、モジュ-ル結合体M2ー5は立体構造の増加を示したが、協同的な三次構造形成や有意な酵素活性は見られなかった。一方、ポリペプチド鎖全長を含むが特定のジスルフィド結合を一本欠いたリゾチ-ム改変体は、グリセロ-ル存在下で効率よく再生され、天然リゾチ-ムと同程度の溶菌活性ならびに2次構造量を示した。グリセロ-ルの効果はαーラクトアルブミンの再生においても見られた。M2ー5のアミノ末端を残基21まで伸長させ、ジスルフィド結合が3本架かり得るような改変体を作製し、グリセロ-ル存在下での再生を行ったが、「正しい」foldingは見られなかった。従って、酵素活性を持つような立体構造の形成のためにはポリペプチド鎖のアミノ末端部分の残基1ー20が必要であり、また、昨年度のM1ー4等の結度から、カルボキシル末端の残基108ー129も必要である事になる。両末端のモジュ-ルM1およびM5が安定な立体構造形成に必要な、いわば「構造モジュ-ル」であり、中の3つのモジュ-ル、M2,M3,M4が「機能モジュ-ル」なのかも知れない。今後は、構造モジュ-ルを保持し、機能モジュ-ルを欠失あるいは置換させた変異体を作製・解析すべきであろう。
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