研究概要 |
硫酸還元菌Desulfovibrio vulgaris Miyazaki F 株のヒドロゲナ-ゼは膜結合性の酵素で、2個あるいは3個の鉄ーイオウ・クラスタ-のみを活性部位としている。このヒドロゲナ-ゼ結晶(分子量89000)の鉄原子の異常分散を利用して、その活性部位の位置を決定するため5波長のX線を用いて回折実験を行い、活性中心を同定することができた。X線の光源には高エネルギ-物理学研究所のSR光を使い、測定装置は坂部らの開発した巨大分子用ワイセンベルグカメラを利用した。反射デ-タは富士フィルム社のイメ-ジングプレ-トに記録させ、BA100で読み取った。回折強度の結晶間のスケ-リング時に導入される誤差を除くため、5波長の回折デ-タを1個の結晶から収集した。X線の波長は1.75(Δf'=5.34,Δf''=0.47)、1.74(Δf'=ー6.1,Δf''=3.94)、1.73(Δf'=ー4.49,Δf''=3.89)、1.49(Δf'=0.89,Δf''=3.03)、1.00A(Δf'=0.236,Δf''=1.56)を用いた。測定した回析強度パタ-ンを指数づけした後、ロ-カルスケ-リングなどを施し一連のデ-タセットとした。スケ-リングのR値(Rscale)は全てのデ-タセットについて4〜5%前後であり、測定時に大きな系統的誤差が導入されていないことがわかった。各波長のデ-タ間のRmergeに着目すると、Δf'やΔf''の差が大きい波長において、Rmergeの値が大きくなっている。これは予想通り異常散乱効果が観測されたことを示している。得られたFーデ-タについて、(F(1.74)ーF(1.00))^2,(F(1.75)ーF(1.00))^2,(F^+(1.74)ーF^ー(1.73))^2などを係数とするパタ-ソン関数を計算した。それぞれのハ-カ-セクションにおいてつじつまの合うピ-クが現れている。しかもこのピ-クが異なったパタ-ソン関数に共通して見られる。このようにして 2つの鉄ーイオウ・クラスタ-の位置を同定することができた。
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