本研究の実施年度内に、1)ゾウリムシ単一個体は、日中真っ直ぐ速く泳ぎ、夜間遊泳速度を減じ遊泳方向変換頻度を増大させる、2)cAMP・cGMP濃度は、共に日中濃くなり夜間は薄くなる(cAMP/cGMP比は、日中次第に増大し日没直後最大に達する)、3)ゾウリムシの静止膜電位は、日中陰極的で深く、夜間は浅くなる、4)原子吸光法を使用して、ゾウリムシの細胞内K^+イオンは、日中減少し、夜間増大する、5)電子顕微鏡を使用して、ミトコンドリアの形態は、日中球形をしているものが多くまたクリスタ構造が明確ではない、夜間は長形したものが多く時には分裂しているものがみられクリスタ構造もはっきりしている、6)protein kinase A及びprotein kinase CはほぼcAMPと平行して変動する、などを明らかにした。ゾウリムシにおいて、アデニル酸シクラーゼ(AD)がcAMPの合成酵素であると同時にK^+チャンネルとしての役割を果たしており、ADを通ってK^+イオンが細胞外に流出するとcAMP合成が促進されること、が報告されている。以上の結果を考え併せると、K^+イオンの細胞外流出による膜電位の過分極化の概日変化と、繊毛打の活性化及びcAMP合成促進の概日変化との間には直接的な関係が存在し、それらはADの活性の概日変化によって制御されていること、が示唆される。従って、 【figure】の経路(closed loop)が、上記したゾウリムシの行動・電気生理・cAMP・cGMPの概日変化形成に重要な役割を果たしている、と考えることができる。
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