研究概要 |
1.日本語学習者の日本語方言音声の聴き取り能力を調査するために,全国16地点で収録された「桃太郎」の方言語りの書き取りを行い,データベース化した。このデータをもとに,次のような観点から分析を行った。 (1)方言音声における清音と濁音および促音,撥音,長音の聴き取りについて分析した。その結果,正聴率が12.2%と低い,促音と長音が聴き取れない,半濁音を濁音に聴き取る,撥音の聴き取りと清濁の聞き分けにはあまり問題がない,ということが明らかになった。 (2)方言桃太郎の文末の聴き取りについて分析した。その結果,共通語と異なる動詞の変化や共通語と異なる助動詞や助詞の付加した形態の聴き取りには困難が見られ,特にその形態が共通語と違って濁音や促音や撥音や拗音を含む場合には誤りが多く,また誤り方も一様ではないということが明らかになった。 2.初級日本語教科書に見られる縮約形を全部抽出して,データベース化した。それの類型化と数量的分析は現在進行中である。 3.中級日本語ビデオ教材のシナリオをカード型データベースに入力し,現在このデータをもとに次のような観点からの分析が進行中である。 (1)相づち,話の切り出し,話順獲得,話順促し,言い淀み,などを分析することによって,会話のストラテジーを明らかにしようとする。 (2)「ああ」「ええ」「まあ」「いや」「だから」「だって」「なんか」「ちょっと」「けど」「〜て」「〜し」「〜じゃない」などを分析することによって,言語形態の会話におけるストラテジーとしての機能を明らかにしようとする。
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