研究概要 |
研究目的(1)の「授業における児童の認知過程を把握するための新しい方法の開発」では,いくつかに再生刺激法(授業終了後,児童にビデオ録画された授業を視聴させ,そしていくつかの授業場面でビデオを中断させて,授業中に考えたり思ったりしていたことを児童に自己報告させる方法)のやり方が開発・検討された結果,「調査時間が短時間ですみ,さらに多人数の児童の調査が可能であり,しかも児童の認知(思考・理解)を十分に把握できる方法」が明らかになった。 研究目的(2)の「授業において児童の認知がダイナミックに変容していく過程を把握することによって,どのようにして児童の科学的知識が形成されていくのかを明らかにする。あわせて,なぜ児童が科学的知識の形成に失敗するのかを明らかにする」では,次のような知見が得られた。1.学習成果の高い児童と低い児童の認知過程の特徴が明らかになった。例えば、学習成果の高い児童は既有知識・経験を適切に使って学習しているのに対して,低い児童はこのような知識・経験をまったく使えていなかった。2.普段の学習成績が良い児童でも,ある概念や法則の学習につまずくと,その単元の学習成果は平均程度にしかならなかった。このような児童の早期発見・治療が大切である。3.学習するにつれてほとんどの児童が理解できていく授業の特徴,また多くの児童が突然理解できなくなる授業場面の特徴などが明らかになった。 研究目的(3)の「授業において教師は児童の認知過程をどのように把握しながら,どのような意思決定をしているのかを明らかにする」では,再生刺激法でえた児童の認知過程についての情報にもとづいて,教師が次の授業計画を適切に意思決定できることがわかった。また,教師は,次の授業過程での児童指導において,再生刺激法の結果を有効に活用していた。
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