研究概要 |
本研究は,理科および算数の授業における5・6年生の認知・情意過程を把握するとともに,それらの子どもの認知・情意過程とのかかわりの中で教師の意思決定を研究することをねらいとして計画された。 主な研究の結果は,次の通りであった。 1.授業における子どもの認知・情意過程を把握するためのいくつかの再制刺激法が開発された。そして,調査時間の節約という観点からみて最も優れた方法は次のようなものであることが明らかになった。それは,どの授業場面を用いるのかを教師が決定し,子どもの自己報告を質問紙法でとらえるといった再生刺激法のやり方であった。 2.次のようないくつかの特徴ある授業場面が抽出された。例えば,授業が進むにつれてほとんどの子どもが理解できていく授業場面や多くの子どもが突然理解できなくなる授業場面であった。また,学習成果の高い子どもは,たえず自らの既有知識や経験を活用しながら授業の中で学習をすすめていた。 3.学習成果の高い子どもの学習意欲(モティベ-ション)の水準は個人差が大きいことがわかった。例えば,ある子どもはわかったことでますます興味がわくのに対して,ある子どはわかってしまったことで興味がなくなるといったように,このタイプの子どもの場合には理解と学習意欲とが複雑な関係にあった。 4.再生刺激法を用いて子どもの認知・情意過程を把握することによって,教師は確信をもって授業設計のための意思決定を行うことができることがわかった。
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