研究計画にもとづいてプロクロスの『神学綱要』を中心にテクスト分析を行った。そして次の事柄を明らかにした。プロクロスは、神を含む全体を、基本的に、四つの段階において観る。第一段階は、万有の根源たる「善一者」(tagathon e to hen)である。これは万有の存有因かつ目的因であり、プロクロス哲学の「第一原理」である。そして万有を「超越」し万有に「内在」する。しかしそれ自身は「存在者」(to on)ではない。「存在者」は「善一者」から発出し、第二階段以下の三つの段階に下降する。そして存在者は「動」によって三つに分類される。すなわち、第二段階は、不動者としての「知性」(ho nous)である。これが「第二原理」である。次に、第三段階は自動者としての「魂」(he psuche)である。そして最後に、第四段階は被動者としての「物体」(to soma)である。以上がプロクロスの哲学体系の骨格である。ここにジルソンの言う「善の優位性の哲学」の特徴がよく現れている。またこれは万有の根源の捉え方に関して中世哲学と根本的に異なる系譜の哲学であることも判明する。さらに次に予定している研究を目指して『原因論』の予備的な分析にも着手した。ここで『原因論』はジルソンの言う「存在の優位性の哲学」の系譜に属することを文献に即して明らかにした。 以上の研究結果を「プロクロス哲学における基本的な四つのtaksisーStoikheiosis theologike(prop.14ー20)を中心にー」という題名の論文で発表した。また同標題下に1990年11月の「日本クザ-ヌス学会」にて口頭発表もした。また「『原因論』における善一者、有、知性者ープロクロス及びトマス・アクィナスとの関係においてー」の題名の論文も発表した。さらにこれらの研究結果を、今までの関連する研究結果とあわせて、『善と存在者ー西洋哲学史研究序説ー』の標題で一冊の専門研究書にまとめた。(裏面参照)
|