研究概要 |
1.実施する以前から所在を把握している「流行神」 (1)「首無地蔵」に関しては地蔵のある広島県府中市での実態調査をほぼ完了し,ここに対する遠隔地からの信者に対する聞き取り調査を中心に実態把握を行った。特に滋賀県からは,当初予想していた以上に数多くの信者が,宗教者の入らない俗人だけの緩やかな組織を形成しながら集団で参詣していることが明らかになり,今後の「流行神」信仰形成を考察する上での重要なポイントであることが指摘できた。 (2)「横樋観音」では,信者の台帳分析を完了し信仰圏や祈願内容の把握ができた。その結果,「首無地蔵」と比較して狭い信仰圏を持つことが明らかになったが,その大きな理由として,仏像出現初期におけるマスコミに関わりが希薄で,主にパ-ソナル・コミュニケ-ションにより情報伝達がなされた点が指摘された。 (3)「幸福仏」「白玉龍神」「緋鯉地蔵」「幸魂様」については予定が遅れ,現在資料収集中である。 2.本年度中,新たに情報を得た「流行神」は数ケ所あるが,そのうち米子市の「出現地蔵」については,地蔵出現に中心的役割を演じた女性(故人)の執筆した出現前後の経緯の記録を発掘し,現在分析中である。その結果は,5月に開催予定の第34回印度学宗教学会において発表予定である。 3.当初の研究計画では予定していなかったが,本年度後半以降から文献に現れた「流行神」に関する記述の収集も併せて実施中である。とりわけ近世に書かれた当該地域の地誌関係の書物の中には多くの「流行神」に関する記述が見られ,次年度にはこの資料を,それらの神仏の現在の姿を対比的に考察・留意しながら分析する予定である。
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