1ビジネスゲ-ム(ビジネス・シミュレ-ション)を用いた実験結果の解析によって、以下の新しい知見が得られた。 (1)試行の初期において適切な意思決定がなされるか否かによって、集団間で最初の業績格差が生ずる。そしてその後は、高業績集団においては、「優位に立てている」という心理的余裕に起因して、集団活動にかかわる情報収集と分析が一段と的確となり、より適切なリスクテイキング行動を示すようになる。そしてまた不況に直面しても冷静な意思決定がなされることから、業績も他集団と比較して向上するなど、いわゆる好循環のサイクルがみられるようになった。 (2)一方、当初の意思決定のまずさのために、他と比較して低業績に陥った集団においては、さらなる失敗をもっとも懸念するところからストレスが高まり、また低業績に甘んじていることから余裕もなくなり、適切なリスクテイキング行動をとることができにくくなる。そしてこれが災いして業績をさらに落とすという、いわゆる悪循環のサイクルが生まれてきた。とりわけ、低業績集団が急激な不況期に直面したときは、時間的な展望が狭くなり、過去や現在の不利な状況に注意を奪われ、肝腎の将来展望などは消失する傾向にあった。また情報にかかわる視野も狭められてしまい、収集する情報も重要なものを見落としたり、入手はしてもそれを読み漏らしたり、あるいは逆に不必要なものを大きなコスト(経費)をかけて集めたりするなどの狼狽現象がみられた。 2集団の成長および発達過程を扱っている既存の研究論文についても広く国内外のものを収集し、それらについて詳細にレビュ-している。これによって得られる知見は、集団の硬直が進行するプロセスを記述する上で活用される。
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