研究概要 |
本年度はまず、この研究に関連する分野の文献,資料を集めた。特にこの分野の研究をリ-ドしている放送教育開発センタ-の大橋力教授の著作を検討するとともに,教授本人からいろいろな資料の提供を受けた。 教授の研究の中で、例えば豊かな自然環境にめぐまれたインドネシアのバリ島の自然音や、そこで用いられている楽器「ガムラン」の音を聞かせると、脳波上でリラックスの指標であるα波がよく出るのに対し、外音の遮蔽効果の高い鉄筋コンクリ-ト造りのビルの中ではα波が減少し、β波が増すことが示されている。興味あることは、前者の音には人の可聴域を超えた20KHz以上の音成分が含まれているのに,後者の環境では20KHz以上の音がほとんどカットされているということである。つまり人が直接感知出来ない音の存在が,脳波上で大きな差をもたらすことが明らかにされているのである。 実験的には、(1)人の可聴域に属さない高周波、低周波音を含む種々の周波数の音を被験者に提示して、それに対する脳波、心電図、皮膚電位反応などを記録する。また誘発電位もとる。(2)種々の可聴音に可聴域を超えた高周波音または低周波音をつけ加えた音を提示し、つけ加えない時と比べて脳波などの生理的指標の上で差が見られるかどうかを調べる。(3)生理的指標の上で変化をもたらす非可聴音を用い、それを古典的条件づけの条件刺激(CS)として用い、条件づけが成立するかどうかを調べる。(4)同じく非可聴音をオペラント条件づけの弁別刺激として利用することが出来るかどうかを調べる、という試みを行なった。 実験のコントロ-ルは購入したコンピュ-タ-を用いるが、そのためのプログラミングは終り、予備実験に入った段階である.これまでに(1)と(2)についての予備実験を行ない、大橋教授の研究の追試を行なっている。
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