平成2年度における研究実験の概要は、以下の4点にまとめることができる。 (1)基礎資料づくりのために実施した生野区における宗教施設の綱羅的な調査の結果、我々は、若干の韓国・朝鮮系の施設を含む生野区内の宗教施設を302ほど特定して一賢表化することができた。 (2)生野区仏教会傘下の日本仏教寺院の殆どが葬儀の執行を通して在日韓国・朝鮮人と関わっているが、頻繁かつ積極的に彼等の葬儀を引き受ける寺院は10カ寺以内に特定されているまた、在日韓国・朝鮮人の側からみた寺への関与の特徴は、宗旨や信仰とは関係なく葬儀屋を通して寺と関わり、施設を借りて読経をしてもらうほかは自らの民族式で葬儀に対応(儒教式の「戒名」や捧げ物など)していることもわかった。なお、彼等は遣骨を預けることを通しても日本仏教寺院と関わっていることも判明した。 (3)神社への彼等の関与は寺院へのそれよりも限定的であるといえるが、それでも彼等は、地領祭・上棟式・開店のお祝いを神社の宮司にしばしば依頼したり、祈願のための神社詣りや祭禮への参加を行ったりすることを通して、神社とも関わってくることがわかった。 (4)他方、新宗教のなかでは創価学会と崇教真光に在日韓国・朝鮮人の信者が比較多く、前者の場合の比率は3割前後に達しているのではないかと関係者に推測されている。また、施設数では新宗教中最大を誇っている天理教(教会のみでも80)の場合、現在、在日韓国朝鮮人の信者を擁している教会の比較は24%、これに「かつて」擁していた教会を加えると45%になることがわかった。 平成3年度における継続分の研究調査では、以上の成果をふまえ、さらに詳細な事実を発見し、よりよい成果へと結びつけていきたい。
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