殆ど無言語か著しい言語発達遅滞を示す自閉症児と重度精神発達遅滞児を対象にして、非音声的、視覚的記号による視覚的意思伝達の可能性を明かにするため、独自な絵記号の開発とその適用上の問題点を検討することを目的とした。 本研究においては、先ず完全な人工言語であるプリマック法、ランバウ法における図形語の学習が、多くの時間と労苦を要するところから、その改善のためにより象形文字に近い絵記号の作成を意図した。その爲の準備作業として幼児、障害幼児の象形文字識別と理解能力の調査、並びに古代土器土偶文様の実地調査を行ない、一般的絵画的形象表現の見本の収集につとめた。調査結果は土器土偶文様のシンボリズムないし記号論的解析の論題で公表した。更にヒエログリフ、甲骨文字などを参考にした絵記号を試作し、年長自閉的傾向児に言語的条件づけを試みた.具体的手順は「絵記号学習ガイドブック」に詳述している。当初は絵カ-ドの手動操作によっていたが、研究の進行に伴い、コンピュ-タ学習システムを設定して、自動化が可能になった。 今年度は依然として予備研究の範囲を出ないが、従前の方法に比しかなり効率的であることが明かとなった。今後更に事例を重ねてみる必要がある。現段階は絵記号単語の理解と絵記号文の構成というシンタックスの検討が中心であるが、更に絵記号文の意味論的分析へと進む必要があるのと、パ-ソナルコンピュ-タ学習システムのより効率的で多様なソフトウェア-の開発も必要である。
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