研究概要 |
子どもの音楽行動をひとつの問題解決思考過程としてとらえる立場から,音楽の授業研究を行った。その目的は,音楽学習において問題解決的思考がいかなる条件下で,いかなる形態で起こり,いかに展開していくかということを明らかにし,音楽授業における問題解決学習の諸要因及び諸要因の関連構造を解明することであった。 実験授業では,音楽構成活動の基本的な手法である「反復」をテ-マに,有音程楽器を使ってグル-プでひとつの作品を作るという課題を課した。対象学級は大阪教育大学教育学部附属平野小学校4年1組とし,1991年1月から2月にかけて計9時間分実施した。 始めに身の回りでの反復の現象を意識させることによって,音で反復を作ろうという課題へ導いた。課題の取り掛かりでは基盤として個性的なものが表面化してきた。実際音を扱う段階では,楽器操作に関する技術的な問題が浮かび上がってきた。それを解決しながら実際に作品を構成していくことに,その作品構造を意識的に把握することがともなっていないことが多く,そういう場合は問題自体が生まれてこないし,したがって作品の発展の可能性ももてなかった。行動したことを自覚的にとらえる場の設定が重要になるのである。そこで他のグル-プ作品との交流やレコ-ド作品の鑑賞の場を設定した。そこに,単なるム-ドの享受にとどまらない,作品の作り方にまで及ぶ聴きかたが生じ,問題を意識するという点に有効であった。問題解決過程を研究対象にしたところ,まず問題をもつこと自体がプロセスを必要とすること,しかしそういうプロセスを経ないと,音楽学習が単に音を操作するだけに終わってしまう危険性が高いことがわかった。次年度は,問題意識より一歩進め,問題解決での情報の取り入れ方に重点をおいた実験授業を行いたいと考える。
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