1.資料収集については、各地の所蔵機関に於て調査を行ない当初目的としていた三つのファトワ-集以外にも現在利用出来るファトワ-集も概ね収集し、全般的な概観を行う基礎作業ができた。またファトワ-集相互の比較を行う為の第一段階として特に重要と思われる事項別にリスト作成にとりかかり研究分担者と補助者と共に、今年度購入したコンピュ-タに入力の作業を行っている。 2.個別の問題について出されたファトワ-の現在までの諸外国での研究状況については、11月と1月に各所蔵機関を調査し学術雑誌等に発表された諸研究を複写しその後検討会を行いた。それについても分担者と共に入力して現在リストを作成している。 3.ファトワ-の果たした役割について、より広い視野から様々な分野の研究者と討議するために、7月に15名の参加をえて研究会を行なった。イスラ-ム法学の研究者と近代史の研究者が報告し、参加者と共に討論を行なった。そこでは、他の地域との差異を明確に意識してイスラ-ム世界の歴史研究を進めるためにこの研究が持つ有効性が確認できたと同時に実際にファトワ-が社会に持った有効性については、個別の問題についての研究を積み重ねることにより解明されることが展望された。また小規模な研究打ち合わせについては、適宜現在まで5回行い、それぞれ専門的知識の提供をうけた。特に秋にはエジプト人の中世史研究者を迎え具体的な史料について話し合う機会を得た。特に7月の報告を主とした報告書については現在編集中であり、来年度の早い時期に発行する予定である。またこの研究によって得られた成果の一部、特にワクフについて11.研究発表にあるように、ワクフ制度について私見を述べたものとアラブ地域におけるワクフ研究について概観したもの、また研究分担者による法学上のワクフの法的地位の変遷についてまとめたものに、それぞれ利用されている。
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