1.革命派発行の雑誌『民報』、改良派発行の雑誌『新民叢報』、上海で発行されていた民間新聞『民報』、清朝商部発行の『商格官報』における華僑関係記事を検索し、複写収集した。その結果、少なくとも20世紀初頭においては、革命派の華僑に対する関心は薄く、一方、改良派は華僑に対し極めて積極的な関心を持っていたなどが明らかになった。 2.在日華僑社会の性格をマクロ的に把握するため、各県発行の『統計書』および『日本帝国統計年鑑』における華僑関係統計を検索し、複写収集した。 3.在日華僑社会の性格をミクロ的に把握するため、とくに長崎華僑について幕末から明治10年代にかけての名簿類の分析を行った。その結果後に横浜弯で華僑社会の中核的存在となる人物が、まず長崎に上陸し、該地を日本への「入口」とし、長崎での一定の活動の後、各地に発展したことなどが明らかになった。 4.明治期在日華僑社会に関する史料的欠をおぎなうため、比較的史料の豊富と考えられる1945年以降の華僑社会の組織形成過程などを試論的に検討した。その結果、華僑社会の形成は華僑自身の自治的動きと、日本政府による政策的対応のはざまになされたことなどが明らかになった。 5.次年度は、今年度検索・収集した史料について、それらを相互に関連づけ有機的に分析して、辛亥革命期の中国の政治・社会・経済情況との関連にも注目しつつ、事実問題の発掘と同時に、分析の枠組みづくりにも留意する。
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