研究概要 |
沖縄・多良間島に伝承されている古謡を収集し,構造分析的な観点からその内容分析を行うことと,古謡がそれをとりまく外的な諸要素とのかかわりのもとにはたす機能との二点について明らかにするために、次のような作業手順を採用した。 1.古謡に関する既刊の文献・音声資料を収集する。 2.臨地調査を実施して,映像・音声資料を収集する。 3.歌詞資料を国際音声記号およびかな文字により翻字する。 4.歌詞を歌形論的に分析する。 5.歌詞の内容を構造・主題論的な観点から分析する。 6.歌唱主体の資格・条件,組織形態,役割および歌唱法を調査する。 7.古謡をうたうことにともなう行動形態を調査する。 収集作業の結果,約30首の古謡を収集することができた。そして,それらの資料については,国際音声記号およびかな文字により翻字する作業,歌形論的な分析,構造,主題論的な分析を終えて整理することができた。さらに,個々の作品に即しての,歌唱主体の資格・条件,組織形態,役割および歌唱法を調査することができた。 以上の収集・分析の結果,現段階において,多良間島の古謡は神々や英雄を主題にする宗教的な古謡と,人々の社会的な関係を描く世俗的な古謡との,二つの大きなタイプに分類することができるだろうという見通しをえた。このことは歌謡をとりまく歌謡をとりまく歌唱主体やその他の諸要素とも関連していて,歌謡の社会的な機能にも二つのタイプが存在することをしめしている。
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