本研究の目的は、日英語の動詞形成過程について、その意味的条件を明かにし、神経回路網モデルを用いて、コンピュータに意味条件を学習させるということである。 意味条件の大まかなものについては、日英語とも明かにすることができたが、神経回路網モデルを用いて意味条件をさらに精密に研究するという目標については、言語学へこのモデルを応用した例が少なく基本的な方法論を定めるためにより単純な問題を用いて研究する必要が生じた。その後に、意味の学習を可能とするモデルを開発し、現在の段階では多義語の意味を学習し、コンテキストによって全く異なった意味を想起するというモデルをコンピュータプログラムとして完成している。しかし、動詞化の過程を研究するためには、時間の概念を組み込む必要があり、現在そのモデルのコンピュータに移植している最中である。 日英語の動詞化の意味条件については以下のようなことが明かとなった。名詞がどのような意味特徴を持っていれば動詞とすることができるかという視点で考える。 英語については、自制可能(主体がコントロール可能)な意味を持つ名詞は接辞を添加することのよって動詞となり、自制不可能な意味を持ち、レキシコンにおいて深く結びついた動作を持つ名詞は由来動詞としてそのまま動詞として用いられる。 日本語については、名詞の中に「動作性」(〜の方法)、という意味特徴を含む場合には、「〜する」を付けて動詞とすることが可能であり、「特徴的性質」(〜の特性)という意味特徴を含む場合に、「〜化する」を添加することによって動詞とすることができる。
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