法は、ますます包括化、完全化、細目化、専門化し、一層早い改正にさらされている。一方、その分全体的見通しがつかず、相互の関連付けが困難となり、ますます説得力を失っているかの状況下にある。法化、規範氾濫、官僚主義化といった概念・用語はこのことを、端的に示すものであり、法の実効性を脅かすものとされてきた。これらの問題の解決の模索の一つが、本研究の課題である「法および行政の簡素化」であった。実際ドイツでは、現行法の大量の整理が行われ、将来の立法に当たっても改善の方策が模索されてきた。しかし、立法改革および行政改革のいずれもが、行政の政治化、政治の行政化など、権力間の交錯が進む状況のもとでは、問題は議会制民主主義の意思決定システムの問題にいたる。最近ではさらに、司法をも含めて、法の実効性の危機が語られ、裁判官と官僚主義化が問題とされている。 しかしこれまで、とりわけ「脱官僚主義」の核心的問題である、行政の意思決定構造の改編=行政改革は、経済的・技術的・社会的激変のもとで、早急の改編が望まれるにもかかわらず、必ずしも成功していないようである。東西ドイツの統合およびEC統合は、この問題をより一層困難にしているのも事実である。この点、立法改革も同様であり、立法に当たっての、不可欠性、実効性および分かり易さの立証義務の要求(いわゆる「青い試験問題」による審査)の範囲は広まりつつあるが、いまだその効果は不明である。 いまだ研究はその端緒に付いた段階にとどまったが、萌芽的研究として、ドイツの法文化と行政文化の発展にかかわる根本問題の所在の確認はできた。今後順次研究成果の発表に努力したい。
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