私の申請研究の目的は以下の3点を追及することにある。すなわち、(1)「経済と環境の相互関係」について、新しい視点からの理論的な再検討を加えること、(2)前記(1)を踏まえて、「環境保全型経済社会の実現可能性とその基本原理」を解明すること、そして、(3)以上をもとにして、これまでの先進国型経済社会が陥っている「経済発展と環境保全とのジレンマ」を克服していく道筋とそのために必要となっている新しい政策体系のあり方を理論的・実証的に探求すること、以上の3点である。 第1年度の平成2年度では、以下に示するような作業課題と方法に即して、申請研究を遂行した。すなわち「経済と環境の相互関係」を、人間社会の発展段階に即して、大きく歴史的に素描・考察し、そのなかでとりわけ近代の産業革命以降にみる工業化と都市化のプロセスの発展過程に焦点を当てながら、それらが歴史的に形成してきた今日の先進国型経済社会の下での「経済と環境の相互関係」の独自な構造的特質を理論的に解明することであった。より具体的には、今日の先進国型経済社会における「経済システムと環境システムとの多面的な相互関係」を、いわゆる産業構造のあり方(第1次産業、第2次産業、第3次産業の具体的構成とそれぞれのあり方)の問題、および地域経済構造のあり方(都市経経済と都市構造、農村経済と農村構造、さらにはそれらの諸関係)の問題を媒介項として、構造的に解明することであった。その際、私自身の当面の仮説的な理論的整理の枠組について、その理論的有効性の検討を中心に研究を進めた。なお、この第1年度にあたる平成2年は、内外でいわゆる地球環境問題への取り組みが大きな問題としてクロ-ズアップしてきたので、その点に関する最新の情報や文献のフォロ-にも努めた。
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