私の申請研究課題の目的は、以下の3点を追求することにあった。すなわち、(1)「経済と環境の相互関係」について新しい視点からの理論的整理と最構築をすすめること、(2)(1)を踏まえて、「環境保全型経済社会の実現可能性とその原理」を理論的に解明すること、そして(3)以上をもとにして、これまでの経済社会が陥っている「環境保全と経済発展とのジレンマ」を克服していく道筋とそのための新しい政策体系のあり方を理論的に探求すること、以上の3点であった。 上記の3点に集約される研究課題を遂行するにあたって、まず最初にとりくんだのは、従来までの経済学における理論的枠組みの再検討とその有効性に関する批判的考察であった。この作業の基本的成果は、後掲の共著(樋田和弘・落合仁司・北畠佳房・寺西俊一著)の『環境経済学』(有斐閣刊)における5つの理論的アプローチの方法として整理されている。すなわち第一には、物質代謝論アプローチ、第二には環境資源論アプローチ、第三には外部不経済論アプローチ、第四には社会的費用論アプローチ、第五には経済体制論アプローチ、である。続いて、以上のような理論的枠組の整理を踏まえながら、近年急速に重要テーマとしてクローズアップされてきた地球環境問題に関する経済的な整理と検討をすすめた。これは当初の研究課題の設定では予定したいなかったことであるが、内外での理論状況に鑑みて、一部予定を変更して、地球環境問題に関する最新の情報や文献のフォローを行った作業の副産物である。この成果についても、後掲の拙著『地球環境問題の政治経済学』(東洋経済新報社刊)としてまとめられている。最終年度にあたっていた平成4年度では、これまでの研究全体のとりあえずのまとめと今後の課題の整理に努めた。
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